「お金が全てではない」
ということは頭の中では分かっていても、
なかなか実感ができませんでした。
だって、お金があれば美味しいものを
食べられるし、好きなものだって食べられる。
だから、結局心のどこかで、それは偽善
なんだろうって思っていました。
自分らしさが出せなくなった仕事
以前私は教育関係の仕事についていました。
昔からの夢であった教育に携わることができて
とても嬉しかった覚えがあります。
授業も子どもたちとのかかわりもとても
楽しいものでした。
それにお給料もそこそこありましたので、
困ることはありません。
使命感もあり、率先して色々な役割を
担っていきました。
勤務していた場所でもそこそこの評価を
得られていましたし、県内の大きな
教育研究の場で発表をするという役割も
果たすことができました。
順風満帆な日々でした。あることに気が付くまでは…
その火種は無かったわけではありません。
当時の私はかなりイケイケな感じでしたので、
快く思っていない人もいたのです。
時折口論になるときもありました。
今思えばかなり失礼で生意気でした。
指示に従わないということではなかった
のですが、歯に衣着せぬ言い方で上司や
年長者のミスを指摘するとか、事後報告で
作業をするなんてこともたまにありました。
そんな態度が災いして、大きな問題に
発展しました。
調子にのって、ある人の仕事に激しくチェック
を入れてしまったのです。
その人との仲は当然険悪に…さらにその人と
仲の良い上司からも目をつけられて
しまいました。
私に対してのチェックが厳しくなり以前ほど
自由に仕事をすることができなくなって
しまいました。
そのことも苦痛だったのですが…
それ以上に苦痛に思ったのは、それほどまでに
相手を傷つけてしまったことです。
配慮の足りない言動でこれまでの信頼関係を
壊してしまったことを後悔するように
なりました。
正しい事を言っていれば相手は
分かってくれる。
自分のやり方は成果を出しているし
効率的だから正しい。
自分のやり方をみんなした方がいいハズ！
実力以上の評価を得過ぎた結果、
相手のことを考えられないように
なってしまっていたのです。
天狗になっていたのです。
これまでの言動を振り返り、
自分を戒めました。
そうするともう何も人に言えなくなって
しまいました。
人との関係性にかなり神経を使うように…
「大丈夫かな？」「相手は不快に思って
ないかな？」ということばかり気にして
仕事が思うように行かなくなりました。
次第に仕事自体に対するモチベーションも
下がっていきます。
そうすると悪い方悪い方へ考えが沈んで行きました。
以前も今もお給料は変わらないし…
だまって黙々と仕事してればそれだけでも
時間は過ぎていくから、もうこのままでも
いいんじゃないかな…
ムリに出世しなくてもへたなことを
しなければ勝手にお給料は増えていく。
むしろあれこれ手を出して、
失敗する方がよくない…
でも、やはりこうも思いました。
自分のしたいことができないまま
仕事をしていってもいいのか？
このまま自分を抑えて、お金のためと
割り切っていってもいいのか？
もやもやとした想いを抱えたまま、ただ苦痛で
面白くない時間を過ごしていました。
その悩みに終止符を打った出来事は感染症の
拡大でした。
この時…友人や地域の人たちで生活困難に
なる人が沢山生じたのです。
私が仕事をしていた地域は観光業や
飲食業によって生計を立てていた人が
多かったのです。
そんな人たちと関わったり、公的な届け出の
相談に乗ったりしている内に自分はこのままで
いいのかと問うようになりました。
言ってしまえば自分は安全圏にいて、
お給料も変わらずいただけてる。
前の出来事以来、仕事もただ自分の役割を
こなすようになっている…
モチベーションなんてない。
仕事のクオリティも以前より明らかに
落ちている。
そんな自分を恥ずかしく思うように
なりました。
このままでいいのか…できることをしないで…
それで適当に生きていて楽しいのか…
そう思った私は、正社員を辞めました。
このまま正社員でいても自分がしたい
ことはできない。
自分が思うことを一生懸命しよう。
そう思ったのです。
自分の苦痛の正体
そして、私は非正規職員になりました。
業種が特殊なので詳しくは書けないのですが、
地域を活性化するための仕事につき、
これまで相談にのっていた人たちに
より専門的な立場からアドバイス
できるようになりました。
直接作業も一緒にできます。
例えば、飲食店からどんな風にアピールを
したらいいかアドバイスが欲しいと相談を
受けたとき…
まずは手堅く補助金申請の方法や原材料費の
コストカットなどを話しました。
次にそのお店を経営している方が占いできる
ということを生かして各所のイベントで
占いブースを出店する方法を提案しました。
するとこれがうまくいき、占いで興味を
持った人が飲食店に足を運ぶようになった
のです。
さらにチラシも作成して、観光マップへの
掲載や企業、学校といったところに広報を
行ったところお店の経営は少しずつですが
持ち直してきたようです。
こういった経験を何度かつんでいくうちに、
自分がしたいこと…そして自分の本当の適性が
見えてきました。
自分が一人で何かをすすめていくよりも、
沢山の人の想いを引き出して、その目標を
実現させていくことが楽しいということに
気が付いたのです。
この時ようやく、自分の苦痛の正体に
気が付きました。
私はずっと仲間が欲しかったのです。
沢山の人と協力しながら何かをして
いきたかったのです。
そう自覚してからは、どんどん自分の
思うことをするようになりました。
地域のイベントに積極的に参加して、
どんどんコミュニケーションを
とっていきました。
すると次から次へとつながりが出てきました。
今度○○のイベントがあるから、出店しない？
今度のイベント一緒にまわろうよ。
等々誘ってもらえるようになりました。
以前の職場ではこんなことは
まずありませんでした。
仕事帰りに食事に行く事はあっても、
お休みの日に一緒に出掛けるほどの仲には
なれませんでした。
こんなに人と交流できるようになったのは
自分の時間に余裕をもてたからでしょう。
色々な人と共にプロジェクトを進めるようにも
なりました。
例えば地域に植生する植物を増やそう
というプロジェクトに広報担当として
参加したとき、
主催者の想いを反映させたチラシを作成して
参加者を募ったり、そのメンバーで行った
イベントの後にはチラシや報告書を作ったり
してさらに多くの人に周知していきました。
こういった仕掛けがうまくいって賛同者が
増えるのはとても嬉しい事でした。
また別の団体とは現在進行形で庭園づくり
プロジェクトを進めています。
華やかな観光施設のない地域に名所を
作るために、この地域ならではの
花々やハーブを使った庭を作っています。
私は主にデザインや道具の調達を
行っています。
協力者も徐々に増えており、近々形になって
いく予感がしています。
こういったプロジェクトを進める時に、
以前の反省から私は気をつけてること
があります。
それは「ただ削減することが効率化ではない」
ということです。
以前は速く正確にすることばかりを重視して、
色々な工程を省いていました。
今でもそれが悪いことだとは思いません。
ですが、本当の意味の効率化ではないなと
思いました。
削るものは確かに削ればよいでしょう。
ですが削ってはいけないもの…例えば
人と人とのつながりを産むことです。
私は転職してから積極的に人に会って
話をするようにしていました。
人から人へ紹介をしてもらったり、
イベント会場で会って話をしたり、
直接出向いて話をしたり…
以前はそんなもの無駄な時間だと
真っ先に切り捨てていたことを
するようになったのです。
直接コミュニケーションをとることで
相手の事が分かるようになると、
意思疎通がしやすくなります。
相手のイメージを汲み取るのも速く
なりましたし、連携もとりやすく
なりました。
また、衝突することもなく、たとえ意見が
食い違っても対話をとおしてよい方向に
持っていけるようにもなりました。
総合的に考えれば、妙な停滞や対立が
なくなった分、かなり効率がよくなった
と言えるでしょう。
自分にとっての幸せ
そしてもう一つ嬉しいことがありました。
それはライターの仕事に積極的に取り組むこと
ができるようになったことです。
学生時代から物書きには興味がありました。
ですが奨学金を返すため、自立した生活をする
ためには堅実に仕事をしなければいけないと
思い、諦めていました。
転職することで自分で自由にできる時間が
増えて、ライターの仕事をする時間を
確保できるようになったのです。
最初はなかなか慣れませんでしたが、
色々な方とお仕事をさせていただくことで、
徐々にノウハウを取得して、今では常に複数の
案件をもてるようになりました。
自分の考えた記事を読んだ人が喜んで
くれたり、執筆したシナリオが形になって
評価を得られたりするととても嬉しい
気持ちになります。
確かに普通に考えれば、正規職員という
安定した立場を捨てるのはおかしなこと
と思われるでしょう。
特に転職が難しい時期ならなおのこと…
ですが、私にとっては今のこの状態の方が
幸せなのは間違いありません。
以前のお仕事にも当然やりがいはありました。
ですが、自分で選択できない仕事も多く、
時間も自由には使えない。
そして、ちょっとしたやりとりで
人を傷つけてしまう可能性も高い…
私には合わなかったということでしょう。
今の状況は、どう考えても安定は
していません。
そう簡単に切られることはないとは言っても、
非正規職員ですから、いつどうなるか
分かりません。
ライターのお仕事だって自分で積極的に
売り込みをして、案件を獲得していかなければ
いけません。
幸い数件継続的な依頼を頂けているので、
それなりの収入は安定して手に入れられて
いますが…
そもそも依頼主様が撤退するなんてことも
しばしばありますので、油断はできません。
それでもやはり、自分で自由に時間を
調整できるというのは本当に
ありがたいことです。
私の体質的に夕方は頭痛が起きやすくで、
仕事のパフォーマンスも下がりがちです。
正規職員だとそういう時にも仕事を
しなければいけません。
でもってそういったタイミングにした
仕事には結構ミスが起きやすいのです。
結局翌日自分でもう一度チェックして
手直しをしてから提出するという
手間もありました。
今は、夕方に一度仮眠をすることで、
頭が冴えやすい夜に仕事をもってくる
ようにしています。
自分でもかなり効率的に仕事できるように
なったなぁと思っています。
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お金にかえられないもの
最初に戻りますが「お金にかえられないもの」
って沢山あるんだなぁと、つくづく思います。
まずは時間。
お金で時間を買えるという理屈はあるのは
承知ですが、それだって時間を短縮する
だけで、時間そのものを作る・増やせる
ということではありません。
今回仕事を変えることで、それまでの時間感覚
を一度リセットして、自分に本当にあった時間
の使い方を発見することができるように
なりました。
これはお金で買うことができる時間とは
別物ではないかなと思います。
次に人間関係。
先ほど紹介したように、色々なイベントに
顔を出すようになったことで沢山の
つながりができました。
食事や遊びに行くことも増えました。
それと…実は序盤にあった人間関係の
トラブルもこの転職がきっかけになって
解決したんです。
一度その場から離れて当時の自分を
客観視できたことで、改めて自分の
落ち度が分かりました。
その上でお詫びもかねて食事に行って
話をしました。
立場も上司と部下から対等な社会人同士となる
ことで、こちらも変に取り繕うことなく
話せましたし、向こうも腹を割って話を
してくれました。
今では協働で仕事をすることもある仲にまで
修復されました。
最後に自分の心。
なんだかんだでこれが一番大事な気がします。
確かに社会に生きる人間として、
何でもかんでも自分の心を優先
することは推奨されるものでは
ありません。
それは単なるわがままや自分勝手というもの
かなと思います。
ですが、社会の成員としての勤めも
最低限したうえで、自分のしたいことを
したり、逆に自分がしたくないことは
しなかったりするのは、自分の心のために
大切なことじゃないかなと思います。
現に私は以前よりも今の方がずっと生き生きと
しています。
自分の心の赴くままに、行動し、それが
地域の人たちの幸せにもつながっている
ことにとてつもない幸福を抱いています。
不安だらけでしたが、当時の自分の
考えを信じて行動して良かったと
思います。
もし今あなたが今の自分の働き方に、
不満や憤りを感じているなら、
本当の自分は何を感じているのか、
何をしたいのか、
そこに目を向けて、今後の働き方について
考えてみてください。
社会は、いろんな人の働きで
成り立っています。
そして、働くということに人生の多くの
時間を費やしています。
なので、働き方って人生に大きく
関わってくることなんですよね。
どういう働き方をするのか。
私は、今の自分が選んだ働き方をして、
本当に充実してるし、幸せを感じています。
私は思うのですが、こういう働き方をする人が
増えれば、社会もとっても良い好循環が
生まれてくると思うのです。
自分らしく生きるため、幸せに生きるため、
そして社会のためにも、自分に合った.働き方を
選ぶ人が増えたらいいなと思います。
最後までご観覧いただきありがとうございました。
この記事があなたにとって何かしらの
参考になれば幸いです。
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